ゲスチン5mgは、女性ホルモンであるプロゲステロンを誘導することで、機能性子宮出血、切迫流早産、習慣性流早産などの治療に使用される薬です。
月経の出血が不当に長いまたは短い、初潮前や閉経後に起こる突然の出血、正常月経周期の半ばに見られる出血などをはじめ、赤色、褐色、ピンク色のおりもののことを不正出血と呼びます。このうち機能性子宮出血は、卵巣ホルモンの活動の異常な亢進、低下で起こる分泌障害が原因の出血です。たいていの場合、出血は突発的に起こり、その量や期間はさまざまですが、下腹痛を伴うことは少なく、黒っぽい色の出血が認められることなどが主な特徴です。
一方、妊娠22-37週未満での分娩を早産、22週未満の場合を流産と言います。切迫早産は、「妊娠22週以降37週未満に下腹痛(10分に1回以上の陣痛)、性器出血、破水などの症状に加えて、外測陣痛計で規則的な子宮収縮があり、内診では、子宮口開大、子宮頸管の展退などが認められ、早産の危険性が高いと考えられる状態」です。また切迫流産も同じく「流産になりかけている」状態のことですが、実際は流産が起こりうる妊娠22週未満の時期に子宮出血があれば切迫流産と呼ぶため、流産になる可能性が高くない場合も含まれています。さらに3回以上の早産や流産を経験している場合を、それぞれ習慣性早産、習慣性流産と言います。
これらの治療は、通常は安静に加えて薬物療法が主流となっていますが、そのひとつがゲスチン5mgによるホルモン補充療法です。
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲストロンの2種類があり、それぞれが女性にとって大切な役割を果たしています。 例えばエストロゲンは別名・卵胞ホルモンとも呼ばれ、肌につやを与える、体に丸みを帯びさせるなど、女性らしさを保つために欠かすことのできないホルモンで、また黄体ホルモンと呼ばれるプロゲステロンは、別名「妊娠サポートホルモン」と言われるほど妊娠に深く関わっている女性ホルモンです。
プロゲストロンは排卵後に卵胞から変化した黄体から分泌して、子宮内膜を肥厚させ、受精卵が着床しやすい状態にします。 この期間は基礎体温が上昇する高温期(黄体期)で約2週間続きますが、この間に授精した場合には妊娠を持続させる役割をします。 そのほかにもプロゲストロンは乳腺の発育作用や妊娠を維持する働きもあるため、不足したりバランスがくずれると、生理不順、無月経、器質的な異常を伴わない予定外の出血、不妊症、流産などが起こることがあります。
ゲスチン5mgの有効成分であるアリルエストレノールは、強力な作用を持つ人工型黄体ホルモンのプロゲストロン誘導体で、強い妊娠維持作用を特長としています。増殖期の子宮に作用し、子宮内膜に分泌期をもたらすことで卵子の着床を容易にして妊娠を継続させるだけでなく、子宮筋の収縮を抑制し、流産を防止する働きを持っています。
また、抗男性ホルモン作用と弱い抗卵胞ホルモン作用もあるため、抗がん剤としても使用されるほか、卵胞ホルモンと協調して乳腺の発育を促す作用も認められています。
なおアリルエストレノールは、高用量において前立腺肥大症に対しても効果があることが報告されており、その治療に使用されることもあります。