グラボル50mgは、メニエール症候群、放射線宿酔のほか、乗り物酔い(動揺病)やそれに伴う吐き気やめまいを抑え、また手術後の悪心・嘔吐を鎮めるために使用される薬です。
メニエール症候群は、めまい、耳鳴り、難聴、耳閉感などメニエール病の症状があるにもかかわらず、メニエール病の原因とされる内耳の内リンパ水腫などが見られない状態を指します。この症状は数時間から、長い場合では数日間続くこともあり、ほとんどの場合はその後も似た症状を繰り返すとされています。
また放射線宿酔は、例えば放射線治療などで高線量の被ばくを受けたときに現われる食欲不振、全身倦怠感、めまいなど、二日酔いに似た全身症状です。その発生には過酸化物質の蓄積とヒスタミン系物質が関与していると言われており、通常は一過性であるため、10日前後で消失することが多いようです。
めまい、吐き気、嘔吐などの症状は、迷路(内耳)の刺激によって現われる自律神経反射である前庭自律神経反射によって引き起こされます。また乗り物酔いなどの動揺病(加速度病)は、目と頭でとらえた位置情報にズレが生じるために脳がこれを不快感と判断し、自律神経の中枢であり、呼吸や血圧など生命にかかわる働きをつかさどる視床下部がこの不快に対抗するためにストレスホルモンを分泌します。すると自律神経が異常に興奮し、血圧の上下、胃の不規則な動きなどの乗り物酔いの症状が現われます。
この前庭自律神経反射は、前庭系刺激が脳幹の嘔吐中枢のヒスタミンH1受容体を介して伝達されますが、この作用を阻害する働きを持つのが抗ヒスタミン薬であるグラボル50mgの有効成分ジメンヒドリナートです。
抗ヒスタミン薬は第一世代と第二世代に分類されており、第一世代はエタノールアミン系、プロピルアミン系、フェノチアジン系、ピペラジン系、ピペリジン系に分かれ、脂溶性が高いため血液脳関門を容易に通過するのが特徴です。視床下部に作用して眠気を引き起こすため鎮静作用があると考えられていますが、ジメンヒドリナートはこのうち第一世代のエタノールアミン系に含まれています。
ジメンヒドリナートは、H1受容体に拮抗して神経伝達物質であるアセチルコリンの働きを阻害する抗コリン作用を発揮することで、めまいなどの原因となる迷路機能の亢進を抑制するほか、嘔吐中枢を抑制して鎮吐作用を示します。