クレオシン・ティー液剤1%は、患部に直接塗布する液体タイプのニキビ治療薬です。
皮膚は三層から成っており、そのうち真ん中の層である真皮には、皮膚の脂である皮脂を分泌する脂腺と呼ばれる腺があります。この腺は毛包に付随しており、皮脂は死んだ皮膚細胞と一緒に脂腺から毛包を上がり、毛穴から皮膚表面に出て来ますが、体質的な問題や表皮の新陳代謝の低下が原因となって毛穴周囲の角質が厚くなると毛穴が詰まります。さらにそこに乾いた皮脂や角質が溜まって毛穴から出ることができなくなると、それがニキビ(ざ瘡)となります。ニキビはホルモン、皮脂、細菌の3つの要素が相互に関わり合い、毛包が炎症を起こした状態であるため思春期にみられることが多く、主に顔を中心に現われるほか、背中、胸の上部、肩などにも発症します。
このニキビを悪化させる原因となるのがアクネ菌です。アクネ菌は皮膚に存在する菌の90%以上を占めており、酸素を嫌うために脂腺の奥に生息し、皮脂を栄養として増殖しています。また、アクネ菌は増殖の際にポリフィンという有機化合物を発生し、活性酸素を大量に排出します。本来、活性酸素は細菌を殺す働きをするため、アクネ菌はほかの病原菌から皮膚を保護したり、皮膚を弱酸性に保つなどの働きもしますが、その一方で、過剰発生により皮膚細胞をも攻撃してしまうため、皮膚細胞が大きなダメージを受けてニキビが悪化し、炎症を起こします。感染がひどくなると、内部に膿が溜まる膿瘍に発展することもあり、皮膚中で破裂した場合はさらに症状が悪化しますが、一般的に軽症の場合は、無理につぶしたり開こうとしない限りは跡形もなく消えます。
さらにアクネ菌は、ニキビの原因となる脂肪分解酵素を作り出して皮脂中の中性脂肪を分解して遊離脂肪酸を作りますが、これが毛穴を角化させるため毛穴を防ぐ原因になります。
このニキビを治療する薬が、クレオシン・ティー液剤1%です。有効成分のクリンダマイシンは、グラム陽性球菌群、嫌気性菌群およびマイコプラズマ群に対して抗菌力を示し、尋常性ざ瘡の病態に関与しているアクネ菌(および表皮ブドウ球菌)に対して抗菌作用を示します。
細菌が生存したり増殖する際にはたんぱく質が必要不可欠であり、細胞のDNAにある遺伝情報を元にリボゾームと呼ばれる細胞小器官でたんぱく質を合成し、新しい細胞をつくり出します。しかしクリンダマイシンはこのリボゾームに結合してたんぱく質の合成を阻害し、細菌の増殖を抑える働きをするため、結果としてアクネ菌の活動を抑制します。
なおクリンダマイシンは、類似薬のリンコマイシンよりも作用は強力とされており、増殖に酸素を必要としない嫌気性菌に対して強い抗菌力を持ちますが、グラム陰性桿菌には活性が弱いため、マイコプラズマへの適応は承認されていません。