クラミジア
クラミジア
クラミジアとは偏性細胞内寄生体といわれる別の生物の細胞内でしか増殖できない細菌の一種です。クラミジア自体には代謝エネルギーを生産する能力はなく、別の生物で生産されたエネルギーをもちいて成長、増殖する寄生体となります。
一般的に「クラミジア」とは、クラミジア・トラコマチスという種によって引き起こされる性感染症(STI)である性器クラミジアを指すのに用いられています。
クラミジアは感染した粘膜細胞内で二分裂増殖します。
クラミジアの感染粒子は封入体といわれる細菌が集中して存在する袋を形成し、その中で分裂・増殖を繰り返します。増殖によって巨大化した封入体は、感染後およそ48~72時間後に感染している細胞膜と共に破壊され、クラミジアの感染粒子が排出されます。
排出された粒子は再び新しい細胞に感染し、分裂・増殖を繰り返します。
◆感染状況◆
性器クラミジア感染症は日本で最も多い性感染症でその感染者数は先進国の中で唯一増加しており、感染者数は男女を合わせて100万人以上と言われています。
正しい感染予防知識がないうえに、感染しても自覚症状がほとんどないため、感染していることを知らずに相手に移してしまったり、症状を進行させてしまうのがその原因と言われています。
1回の性交で感染する確率は50%と言われており、クラミジアを発症しているとHIVなど他の性感染症にかかる割合が3~5倍も高くなると言われています。
**クラミジア病原体は生体内でのみしか生存できない為、お風呂、便座、コップなどの日常生活で移ることはありません。**
◆女性における感染の進行◆
クラミジア病原体は子宮と膣を結ぶ子宮頸管で増殖を開始し子宮頸管炎が引き起こされます。
この時点でおりものの増加、頻尿、排尿時や性交時の痛みなどの諸症状が現れる場合もありますが、実際は感染した女性の半数から4分の3においては自覚症状が現れず、無治療のまま放置されるケースが多いのが現状です。
クラミジア感染は子宮頸官炎、子宮内膜炎、子宮付属器炎(卵管や卵巣の炎症)、骨盤内腹膜炎、肝周囲炎という上行形で進行します。
卵管炎を引き起こすと膿で卵管が詰まってしまうことから子宮外妊娠や不妊の原因になるといわれています。
また妊娠している女性がクラミジアに感染すると流産や早産を引き起こす絨毛羊膜炎を発症したり、分娩時の産道感染によって新生児がクラミジア肺炎やクラミジア結膜炎を発症させることもあります。
◆男性における感染の進行◆
クラミジアが尿道で増殖するため尿道炎が引き起こされます。
この時点で尿道のかゆみや違和感、軽い排尿痛などの症状が認められる場合もありますが、約半数の感染者には自覚症状が現れないため、感染に気がつかず無治療で放置されてしまうケースが大半と言われています。
放置しておくと感染が進行し、明らかな症状のないまま前立腺に膿がたまる前立腺炎や、精巣上体と呼ばれる精巣に隣接した管状の副睾丸が炎症を起こして腫れあがる副睾丸炎(精巣上体炎)を引き起こします。
副睾丸炎になると精管がつまり精子の通過障害を起こすため不妊の原因になるともいわれています。
◆潜伏期間◆
約1~3週間といわれています。
◆性器クラミジアの症状◆
女性 |
男性 |
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性器のにおい、痒み |
膣炎 |
排尿痛 |
尿道炎 |
おりものの増加 |
膣炎 |
性器の痒み |
尿道炎 |
白く水っぽい |
子宮頸管炎 |
尿道の痒み、違和感 |
尿道炎 |
排尿時の痛み |
子宮頸管炎 |
尿道の赤み |
尿道炎 |
性交時の痛み |
子宮頸管炎 |
尿道から膿や |
尿道炎 |
不正性器出血 |
子宮頸管炎 |
会陰(肛門と陰嚢の間 |
前立腺炎 |
生理痛 |
子宮内腹炎 |
陰嚢の腫れ、激痛 |
副睾丸炎 |
下腹部の痛み |
子宮内腹炎、 |
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上腹部の痛み |
肝周囲炎 |
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◆喉頭クラミジアとは◆
性器クラミジアの病原体であるクラミジア・トラコマチスは生殖器以外に喉にも感染することが知られています。
近年ではオーラルセックスが一般的なったこともあり、生殖器から咽頭、逆に咽頭から生殖器へのクラミジア感染が増えています。
咽頭クラミジアの症状には喉の腫れ、痛み、発熱などがあるといわれていますが、これらの症状は風邪をひいたときなどにみられる咽頭炎によく似ています。
症状が現れないケースも多く、知らず知らずのうちに感染を広めている場合もあります。
咽頭クラミジアは性器クラミジアと比べて治りにくいと言われていますが、それは口内に存在している常在菌とクラミジア病原体が遺伝子の交換をしてより強い菌となるからではないかと考えられています。
◆クラミジアの治療法◆
クラミジアは完治できる病気で、その治療方法は抗生物質を一定期間服用するだけという非常に簡単なものです。
クラミジアは細胞内で比較的長い細胞分裂周期を持っている病原体です。
多くの抗生物質が細胞内には浸透しにくいという特性を持っているため、抗生物質がクラミジア病原体に最も有効なのは、クラミジア病原体が増殖後に封入体と共に細胞膜を破って排出される時であると言われています。
ただしクラミジアは他の細菌類が生存に必要不可欠としているような細胞壁をもっていないため、細菌の細胞壁合成を阻害することによる細菌の死滅させるペニシリン系、セフェム系などのβラクタム系抗生物質は効きません。
また、アミノグリコシド系はクラミジアには無効(不感受性)です。
クラミジアに有効なのは細菌のリボソームという細胞内小器官に結合し、細菌の生存に必要とされるたんぱく質の合成を阻害することによって細菌の生育を止めるマクロライド系、テトラサイクリン系抗生物質です。
また、細菌のDNAの合成を阻害することによってリボソームでのたんぱく質の合成を阻害するニューキロノン系抗生物質のいくつかはクラミジア治療において有効と言われています。
クラミジア治療にはマクロライド系抗生物質の投与を1日2~3回、1~2週間継続するのが一般的です。
しかし自覚症状が乏しいことから薬の投与忘れや、自己判断による投与の中断などで完治しないままになってしまうケースも多いと言われています。
トヤマ堂で取り扱っている『アジスラル』、『アジスロマイシン(ジスマロック)』は薬効が体内で作用するとされている半減期が非常に長く続くため、たった1回の服用でクラミジアを完治させられるといわれているお薬です。
また『レボクイン』はニューキロノン系の治療薬となります。
完治には2週間程かかるといわれています。
症状は数日でなくなることがほとんどですが、完治していないうちに治療を中断するとクラミジアが薬に対する耐性をつけ、治療が難しくなる可能性もあるため医師の指示に従って治療を受けることが必要です。
また、クラミジアはパートナー同士でお互いに感染させ合うピンポン感染があるため、両者の治療を同時に行うことも必要です。完治後も1年間に1回は検査を受けることが勧められています。