クラシッド500mgは、1990年に開発されたマクロライド系の抗生物質で、ニューマクロライド系抗生物質とも呼ばれています。
最初にマクロライド系抗生物質として発見されたエリスロマイシンは、マクロライド系抗生物質の中でも最も抗菌力が強いとされていますが、その反面で分解物が胃腸障害などの副作用に関与し、また血中濃度が上がらないという欠点がありました。
クラシッド500mgの有効成分であるクラリスロマイシンはこのエリスロマイシンの誘導体で、体内で吸収された後にエリスロマイシンとして作用するため、胃酸に対して安定性があり、また組織移行性が優れていることが特長です。
クラリスロマイシンの属するマクロライド系抗生物質は、細菌の細胞リボゾームにある50Sサブユニットと呼ばれる部分で行なわれるたんぱく合成を阻害し、細菌細胞の増殖を防ぐ働きがあります。
細菌が増殖するときは、それぞれの細胞のDNAにある遺伝情報を元に「リボゾーム」と呼ばれる細胞小器官でたんぱく質を合成して新しい細胞をつくり出します。 たんぱく質は20種類のアミノ酸が組み合わさって構成されますが、クラリスロマイシンは、たんぱく質を合成する50Sサブユニットに結合することによってアミノ酸同士を結合できなくさせ、たんぱく合成を阻害します。
原則的にクラリスロマイシンの作用は主に静菌的であり、細菌を殺すというよりはその増殖を抑え、免疫による殺菌作用を誘導するとされていますが、高濃度においてはインフルエンザ菌、肺炎球菌、淋菌など一部の菌に対して殺菌的作用を示します。
また、クラリスロマイシンのような14員環マクロライド系抗生物質には、細菌のバイオフィルムと呼ばれる、薬剤の透過性を阻害する菌膜を破壊する能力があるため、薬剤が有効に細菌に対して作用するとされています。
マクロライド系抗生物質は、抗生物質の中では比較的副作用が少なく、適応する細菌の幅が広いのが特徴です。 特にダニやしらみなどが媒介となって発疹チフスなどを発症させるリケッチア、性病のひとつであるクラミジアなどの細胞内寄生菌や、細胞壁を持たないマイコプラズマに対しては第一選択薬となることが多いようです。
さらに最近の研究によって、マクロライド系抗生物質には従来の抗菌作用のほかに、炎症性疾患の原因となるインターロイキン、ロイコトリエンといった物質の産生や、リンパ球の増殖抑制などによる抗炎症作用があることが解明されたことから、びまん性汎細気管支炎の治療に用いられています。さらに抗ウイルス作用や血管新生作用なども報告されており、その新しい作用機序についての研究が進められています。
なおクラリスロマイシンは以下の菌種、症状に効果を発揮します。
1.一般感染症
【適応菌種】
クラシッド500mgに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、インフルエンザ菌、レジオネラ属、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、クラミジア属、マイコプラズマ属
【適応症】
表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、外傷・熱傷および手術創などの二次感染、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染、尿道炎、子宮頚管炎、感染性腸炎、中耳炎、副鼻腔炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎
2.非結核性抗酸菌症
【適応菌種】
クラシッド500mgに感性のマイコバクテリウム属
【適応症】
マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症を含む非結核性抗酸菌症
3.胃潰瘍・十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ感染症
【適応菌種】
クラシッド500mgに感性のヘリコバクター・ピロリ
【適応症】
胃潰瘍・十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ感染症