カンジタ

カンジタ

カンジタは細胞核内に染色体を含んでいる単細胞の微生物で真菌類の一種(カビ)です。

自然界には100種属ほど存在するとされていますが、人体の病原体となるものはそのうちの数種類のみです。

そのため「カンジタ」と言えば性器カンジタ症、皮膚カンジタ症、及び鷲口創(口腔カンジタ症)といった病状や、それらを引き起こすカンジタ・アルビカンスそのものを意味するのが一般的です。

カンジタ・アルビカンスは常に人体の皮膚、口内、腸管及び膣内などに常在しています。

体が健康であれば人体になんの悪影響も与えませんが、疲労、体調不良、妊娠などをきっかけに増殖し、カンジタ症を引き起こします。

カンジタ症は発症部位によってその症状もまちまちですが、体力や免疫が極端に弱くなっている人においては消化管、器官、肺、腎臓などの内臓までもが感染する場合があり(内臓カンジタ症)、場合によっては命取りとなることもあります。

 

◆性器カンジタ症の発症◆

性器カンジタ症はもともと生殖器(膣内)に常在しているカンジタ・アルビカンスが体力の低下のような些細なきっかけで増殖することによって引き起こされます。

このカンジタ・アルビカンスはカビの一種のため、温かく湿った風通しの悪い場所を好んで増殖する性質があります。

そのため女性の膣は人体の中でもカンジタ増殖にとって最適な場所となり、ほとんどの女性が性交渉の有無に関わらず一生に一度は性器カンジタ症を発症するとも言われ、中には再発が繰り返されることもあります。

妊娠中には免疫低下などの原因から約30%の妊婦が性器カンジタ症を発症するといわれています。

性器カンジタ症は分娩時に産道感染し、新生児の鷲口創(口腔カンジタ)や、ごく稀ではありますが、先天性皮膚カンジタ症や全身性カンジタ症の発症原因となります。

男性器は体外に露出しているため通気性が良く、カンジタ・アルビカンスの増殖に適した環境ではない為、体調不良などによる性器カンジタ症を発症する割合はごく低いとされていますが、パートナーとの性交によって感染・発症します。

 

◆性器カンジタ症の症状◆

女性

男性

膣、及び外陰部のかゆみ

亀頭のかゆみ、及びただれ

ヨーグルトやカッテージチーズのような
白いおりものの増加

亀頭の水泡(亀頭包皮炎)

性器の炎症(熱く、ひりひりする感じ)

尿道炎(稀)

性交時の痛み

 

排尿時の痛み、及び排尿障害

 

 

**男性においては症状が現れにくいため、注意が必要です。**

 

◆そのほかのカンジタ症◆

性器カンジタ症の病原体であるカンジタ・アルビカンスは生殖器のみでなく口腔や皮膚においても増殖する場合があります。

口腔カンジタ症はカンジタ・アルビカンスが口腔粘膜に感染した状態で鷲口創とも呼ばれ、小斑点状の白い膜(白苔)が口の中にできます。

皮膚カンジタ症は皮膚に常在しているカンジタ・アルビカンスの増殖によって引き起こされる疾患で、手カンジタ症、カンジタ性指間びらん症、カンジタ性爪囲爪炎などがあります。

症状は感染の場所によって様々です。

これらのカンジタ症が通常引き起こされることはめったにありませんが、体力、及び免疫力の低下、高齢、糖尿病などを患っている場合などにおいてはカンジタ・アルビカンスが増殖しカンジタ症を発症します。

また抗生物質を服用していると抗生物質によって体内に常在している菌が除去されることにより、カンジタ・アルビカンスなどが異常増殖する場合もあります。

 

◆カンジタの治療法◆

カンジタ・アルビカンスは真菌類に分類されるカビの一種です。真菌と細菌の違いはその構造上の違いにあります。

細菌も真菌も基本的には単細胞生物ですが、細菌には核がなく、DNAが細胞内に浮かんでいる状態にあります。

一方の真菌には核があり、DNAは核膜に包まれて存在しています。つまり、真菌類の細胞の構造は細菌類と比較して、人体の細胞の構造により近いものになります。

この人体細胞との類似性の為、真菌細胞を壊滅させる薬の成分の多くは同時に人体細胞までを少なからず損傷、或いは死滅させてしまいます。

そのため抗真菌薬は抗生物質のように多くの菌に対する殺菌作用を持つことはなく、限られた真菌類にのみ作用します。

トリアゾール系抗真菌剤はカンジタ・アルビカンスの細胞膜を構成しているエルゴステロールの合成を阻害することによって抗真菌作用を発揮します。

エルゴステロールは人間の細胞膜を構成しているコレステロールと同様に細胞膜の流動性や情報伝達などの機能維持や、生体機能を調整する物質を構成する真菌類独自の物質です。

エルゴステロールの合成が阻害されると細胞膜の強度や透過性、各種の酵素元などの膜機能に障害が起こり、カンジタ・アルビカンスの発育を停止させます。

 

トヤマ堂で取り扱っている『スポラノックス』、『ダイフルカン』『フルコナゾール』『フォルカン』はイトラコナゾールやフルコナゾールを有効成分とするトリアゾール系抗真菌剤です。

 

また『ニゾラル(ニズラル)』は皮膚の角質親和性が高いと言われているケトコナーゼを有効成分としたイミダゾール系抗真菌剤療薬で、皮膚カンジタ症により効果があるとされています。(『ニゾラル クリーム 2%』は皮膚カンジタ症の治療薬としてのみご使用ください。)

 

カンジタ・アルビカンスに有効な抗真菌薬はエルゴステロール合成阻害薬のみでなく、アリルアミン系の『ラシミールクリーム』、『ラシミールジェル』などもあります。

有効成分の塩酸テルビナフィンはエルゴステロールの合成に必要不可欠であるスクアレンエキシポターゼという酵素を阻害します。

その結果スクアレンとい油脂成分が毒性濃度まで蓄積されてエルゴステロールの合成が阻害され、カンジタ・アルビカンスの発育を停止します。

ラシミールクリーム』、『ラシミールジェル』は皮膚カンジタ症治療薬ですので、 粘膜(生殖器)には使用しないで下さい。

 

治療には2週間程かかるといわれています。症状は数日でなくなることがほとんどですが、再発を防ぐためにも医師に指示された治療期間を守り、増殖を完全に抑えることが必要です。

性器カンジタはパートナー同士でお互いに感染させ合うピンポン感染があるため、両者の治療を同時に行うことも必要です。