オングリザ5mgは、II型糖尿病に効果を発揮する、新しい作用機序の糖尿病治療薬です。
インスリンは、血液中の血糖(ブドウ糖)を体の組織に送り込んで活動エネルギーに変え、また食後に血糖が上がらないように調節する作用を持つホルモンです。
このインスリンが不足したり働きが弱くなると、血液中の糖分が効率よくエネルギー源として利用できなくなり、筋肉や内臓にエネルギーが運ばれなくなるために全身のエネルギーが不足します。このようして起こる病気が糖尿病です。
糖尿病はI型糖尿病とII型糖尿病に分類することができます。
I型糖尿病は、すい臓にあるβ(ベータ)細胞というインスリンを作る細胞が破壊され、体内のインスリン量が絶対的に足りなくなって起こります。
通常は若い人や子供に多くみられるため、若年性や小児性糖尿病と呼ばれることもあります。
一方II型は、何らかの原因でインスリンの分泌量が少なかったり、インスリンの働きが悪くなったりすることで起こる糖尿病のことを指します。
この原因として考えられているのは、遺伝と生活習慣です。
例えば食べ過ぎ、運動不足、肥満、喫煙、飲酒、ストレス、加齢などが関わっているとされており、日本人糖尿病患者の約95%以上がこのタイプだとも言われています。
またI型が急激に発病するのに比べ、II型はゆっくりとその症状が現われ、初期段階では自覚症状がほとんどないのも特徴です。
糖尿病の初期治療では、血糖の低減、心肺強化、血圧降下などの効果が期待できるために、食事療法および運動療法が重視されますが、改善が見られない場合はこれらの治療法と併用して薬物療法が用いられます。
オングリザ5mgは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の分解酵素であるジペプチジル・ペプチダーゼ-4(DPP-4)を阻害することによって血糖値上昇抑制作用を発揮するDPP-4阻害薬です。
GLP-1は、食事による血糖値上昇に伴って食後早期に小腸から分泌され、すい臓のβ細胞を刺激してインスリン分泌を増強させるインクレチンと呼ばれるホルモンの一つです。
しかし生体内ではDPP-4の働きにより急速に分解されてしまうため、今まではGLP-1を高濃度に維持することは非常に困難とされてきました。
オングリザ5mgの有効成分であるサクサグリプチンはDPP-4と結び付きその作用を不活性化させます。
この作用によりGLP-1の血中濃度が維持されてインスリンの分泌を継続して亢進することから、食後高血糖と呼ばれている食後の急激な血糖値の上昇が抑制されます。
近年においては食後高血糖による血液中の過剰な糖分が血管内皮を損傷し、動脈硬化の進行を促進させることによる脳卒中や心筋梗塞の危険性が指摘されており、II型糖尿病の治療はいかにこの食後高血糖状態を抑えるかに重点が置かれるようになってきています。
また、サクサグリプチンによるインスリン分泌増強は肝臓の糖新生作用をも抑制することから、食間や睡眠中の血糖値の上昇も抑えられ、結果としてII型糖尿病の症状が改善されることが報告されています。