オルメスマート40mgは、血圧を上げる体内物質であるアンジオテンシンIIの産出を抑えて血管を拡張し、水分や電解質が調整されることで血圧を下げる高血圧症の治療薬です。
動脈内の圧力のことを血圧と言いますが、その動脈の中膜にある血管平滑筋が収縮し、循環する血液量が増加した状態を高血圧といいます。また動脈硬化により動脈壁が硬くなり、血管抵抗が上昇することでも高血圧になります。
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系は、血圧調節や体液調節に重要な役割を果たすホルモン系の総称です。血液低下や血液中のナトリウム(塩分)が低下すると、腎臓の傍糸球体装置からレニンという物質が血液中に放出されます。このレニンは、肝臓で合成されて血漿中に存在するアンジオテンシノゲンという血漿タンパク質をアンジオテンシンIに変換させます。すると今度はこのアンジオテンシンIが肺や血管内皮細胞にあるアンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンIIという物質に変換され、受容体と結合することで動脈の血管収縮を起こして血圧を上昇させます。さらにこのアンジオテンシンIIは、副腎皮質球状体に作用してアルドステロンの分泌を、また脳下垂体に作用してバゾプレッシンの分泌をそれぞれ促進します。アルドステロンは循環血液量や血圧の維持に重要な働きを示すホルモンで、ナトリウムを再吸収することで血管内の血流量を増やし、血圧を上げる作用をします。また抗利尿ホルモンであるバゾプレッシンは、細動脈を収縮させて血圧を上昇させます。
アンジオテンシンIIはアンジオテンシンII受容体と結合することで初めて作用します。アンジオテンシンIIには2種類の受容体があり、受容体1と結合すると血管収縮、血圧上昇、利尿作用、細胞増殖などの働きをし、その反対に受容体2と結合した場合は血管拡張、血圧下降、細胞増殖抑制などの働きをします。このアンジオテンシンIIが高血圧の原因となる受容体1との結合を妨げる役目を果たすのがオルメスマート40mgの主成分であるオルメサルタン メドキソミルです。
オルメサルタン メドキソミルのようなアンジオテンシンII受容体拮抗剤の研究は1970年代から始められていましたが、実際に高血圧症治療薬として本格的な研究がスタートしたのは1980年代のことです。オルメサルタン自体は高血圧症に対して大変すぐれた効果を発揮する成分でしたが、動物実験では経口吸収率が4.1%と、経口吸収率が異常に低いという問題点がありました。長年の研究の結果、メドキソミルによりプロドラッグ化(生体内で何らかの返還を受けて薬理活性を示すように化学修飾を行なうこと)することで吸収率を5倍に改善することが可能になり、体内での加水分解により速やかにオルメサルタンとして作用させることにも成功しました。
最近の研究によると、マウスによる試験の結果、オルメサルタンが認知機能の低下に対して有意に抑制され、また記憶力に対しても有意な改善が認められた、との報告があります。将来的には、高血圧症の治療だけでなくアルツハイマーの治療薬としても期待がもたれている薬です。