エンデース40は酢酸メゲストロールを主成分とし、主に進行性上皮性悪性腫瘍の乳がんや子宮内膜がん(再発、手術不可能、転移性疾患の場合)の症状を治療するための薬で、手術、化学治療、放射能治療の代用としての使用はされません。
体に丸みを帯びさせ、肌をつややかにするなど、女性を女性らしく保つために欠かせない女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)。
しかしその反面で、このエストロゲンは乳がんや子宮内膜がんを引き起こす原因のひとつであると考えられています。
過剰に分泌されたエストロゲンは乳腺組織や子宮内膜を刺激し、細胞の増殖を促すことで遺伝子を傷つけ、それが変異してがんになります。
特に初潮が早く来た人や、未婚・妊娠、出産経験の少ない人、閉経が遅い人などはエストロゲンの作用期間が長いため、これらのがんの発生リスクが高くなるとも言われています。
このように、女性ホルモンに起因するタイプのがんを「ホルモン依存性乳がん」と呼びます。日本人のがん患者の約65%はこのタイプであるとの統計があります。
ホルモンは単体では作用せず、それぞれ受容体と呼ばれる受け皿と結合することで作用します。例えば、エストロゲンはエストロゲン受容体と結合することではじめて作用するのです。
ところで、がん治療のひとつにホルモン療法(内分泌療法)があります。
これは、これらのホルモン受容体がホルモンと結びつくことを防いだり、エストロゲン自体の産出を抑えることでがんの増殖を抑える治療法です。
しかしこの治療法はすべてのがん患者に適応するわけではなく、がん細胞の生体検査で、エストロゲン受容体もしくはプロゲステロン受容体、または両方の受容体が陽性(存在する)である必要があります。
エンデース40の主成分である酢酸メゲストロールは、このホルモン療法(内分泌療法)に使用される強力な合成プロゲステロンです。
服用によって乳がん細胞の増殖を抑えることができることはわかっていますが、そのしくみは複雑であるためはっきりと解明されていません。
しかしプロゲストロン受容体に結合することによって内在するプロゲステロン同様に細胞死を促進し、エストロゲンの刺激によってもたらされる細胞の急激な増殖を抑える作用が作用機序のひとつであると考えられています。
抗エストロゲン剤に効果の現われない人に対しても効果が期待でき、受容体が陰性の場合でも多少の期待ができると言われています。
また食欲を増進させる作用もあることから、アメリカでは酢酸メゲストロールの経口混濁液がエイズ患者の食思不振や悪液質の治療薬として承認されています。