エクスタン25mgは閉経後乳がんに対して、1日1回の服用で優れた抗腫瘍効果を現わす薬です。
日本における乳がんの患者数は、かつては欧米諸外国に比べて少ない傾向にありましたが、近年の生活様式や食生活の欧米化に伴い乳がんにかかる日本人は急増し、1995年以降には女性におけるがんの第1位となっています。一般に高齢になるほどがんの発生率が高くなるのに反して、日本人女性の乳がんの場合はエストロゲンレベルが下がる閉経年齢あたりで一度減少し、閉経後に再び少しずつ発生率が上がりはじめる傾向があるようです。
女性におけるがんの発症に深く関わっていると考えられているのが、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンです。本来は、体に丸みを帯びさせる、肌にはりをもたらすなど、女性を女性らしくさせる働きをし、閉経前は卵巣でつくられますが、閉経により卵巣の周期的機能が終了すると、今度は副腎から分泌される男性ホルモン(アンドロゲン)にアロマターゼという酵素が作用してエストロゲンをつくり出します。これに加え、肥満、遺伝、閉経前の飲酒や喫煙といった生活習慣などが関連することで、閉経後においても引き続き乳がんになる可能性は絶えることがありません。そのため、閉経後乳がんに対してはこのアロマターゼの働きを阻止してエストロゲン産出を抑えるのが有効と考えられ、そのための薬がアロマターゼ阻害薬であり、エクスタン25mgです。
エクスタン25mgはこのほかにも、乳がんの手術後に再発生を防ぐための術後補助療法にも使用されています。従来の術後補助療法では、タモキシフェンという薬が使用されるのが主流でした。このタモキシフェンはがん細胞のエストロゲン受容体に結合し、エストロゲンが持っている増殖刺激を遮断することでその働きを抑制する薬で、欧米では乳がんの術後補助療法として5年間のタモキシフェンの服用が推奨されています。しかしタモキシフェンは長期間服用することで子宮がんや血栓症のリスクが高まる可能性があり、また5年間服用と10年間服用を比較してもがんの再発抑制率に対して大きな差が現われないという問題がありました。
ところがエクスタン25mgを含むアロマターゼ阻害薬を術後補助療法として使用した場合、子宮がんなどの副作用の報告はなく、さらにタモキシフェンでは効果が現われなくなった人に対しても、奏功率、生存率、進行までの期間のいずれの項目において良好な結果を示すことが認められています。
術後補助療法は高い効果が期待できる一方で、薬剤に対する耐性発現の問題があります。これは薬を服用し続けることによって体が慣れてしまうために、薬の効果が現われにくくなることを言います。実際、タモキシフェンを使用した術後補助療法の場合、服用後2-3年目あたりで耐性を得やすいとされているため、がん細胞の再発の可能性が増えてきます。
ところが最近の実験で、がん細胞が耐性を持つ前にアロマターゼ阻害薬の服用に切り替えるスイッチ療法を採用することで、がん細胞の再発率が有意に減ったとの結果が出ました。エクスタン25mgは、このスイッチ療法においても優れた効果を発揮する薬でもあります。