エイゾプト点眼液1%は、緑内障や高眼圧症の人で、ほかの緑内障治療薬の効果が不充分または使用できない場合に使用する点眼薬です。
眼球の内部には毛様体でつくりだされた房水という水が流れており、角膜や水晶体などの組織に酸素や栄養を運んだり、逆に老廃物を回収する働きをしています。
この房水は角膜と虹彩の間にある隅角から眼球の外に排出されることによって水量を一定にし、眼圧も一定に保たれています。
しかし何らかの原因で房水の排水口である線維柱帯が少しずつ目詰まりし、房水が流れにくくなることで眼圧が高くなった状態が開放隅角緑内障で、緑内障の約10%を占めていると言われています。
この状態を放っておくと視神経が圧迫され、視神経に栄養を送る毛細血管が損傷して血流が悪くなるために、少しずつ視野が欠けていき、最終的には失明することもあります。
緑内障は初期症状がほとんどないので視野が欠けはじめてから病気に気づくケースが多く、またその状態になってからでは既に病気が進行してしまっていることが多いうえ、一度欠けた視野は回復しないために早期発見、早期治療が求められています。
一方で高眼圧症は、緑内障と同じく眼圧が正常値より高くなった状態を指しますが、視野にはほとんど影響がありません。
しかし1年で1-2%、5年で8.5%程度の割合で緑内障へ移行すると言われており、特に高齢者においては、その大部分が緑内障前駆期であるとされています。
緑内障の治療目的は緑内障性視神経障害の進行を抑えることであり、眼圧を下げることに重点が置かれています。
現在、眼圧を下げる薬として日本ではβ(ベータ)遮断薬とプロスタグランジン製剤が治療薬の主流ですが、これらの薬に加え、最近広く使用されつつあるのが点眼用炭酸脱水酵素阻害薬です。
炭酸脱水酵素阻害薬は優れた眼圧降下作用を持つため、かつては緑内障の経口治療薬として必要不可欠な薬でしたが、胃腸障害、腎臓・尿道結石、低カリウム血症、指や唇のしびれ感、などの副作用が問題となり、使用中止を余儀なくされました。
その後、眼局所に使用する薬として新たに改良された炭酸脱水酵素阻害薬が、エイゾプト点眼液1%の有効成分であるブリンゾラミドです。
ブリンゾラミドは、房水の産生に関係する炭酸脱水酵素(CA)の働きを阻害し、房水の産生を減らすことにより眼圧降下作用を示すと考えられており、また局所使用であるため、炭酸脱水酵素活性の低下による全身的な副作用や心血管系の副作用が発現しないのが特長です。
通常、緑内障の治療には複数の薬剤を同時に使用する併用療法が採用され、主にβ遮断薬とプロスタグランジン製剤が併用されています。
ところが、場合によってはβ遮断薬の全身的副作用が危惧される症例もあることから、その代わりとして点眼炭酸脱水酵素阻害薬が使用されます。
点眼炭酸脱水酵素阻害薬は、プロスタグランジン製剤あるいはβ遮断薬と併用された場合でも安定した眼圧効果を示し、全身的安全性はβ遮断薬に勝るとも言われており、さらにプロスタグランジン製剤との併用が優れていることが試験により明らかになっています。
しかしながら、ブリンゾラミドは眼圧下降作用の面でプロスタグランジン製剤や高濃度のβ遮断薬よりも劣るために、単独使用は原則としてこれらの薬剤が使用できない例に限られていますが、現在の薬物治療体系の中ではブリンゾラミドは併用薬として大きな存在意義を持ち、緑内障薬物治療に欠くことのできない薬剤のひとつです。