アルフシン10mgは良性前立腺肥大症に伴う機能的症状および、それに伴う65歳以上の人の急性尿閉の4日以内の治療に有効な薬です。
前立腺肥大症とは、男性独自の器官である前立腺が肥大し、尿道や膀胱を圧迫することによって起こる残尿感、頻尿、尿意切迫感、尿線途絶、尿性低下、副圧排尿、夜間頻尿などの排尿障害です。 50代くらいから徐々に多く見られるようになり、60代では50%以上、80代では90%の男性に認められるとされている疾患です。
しかし前立腺そのものが未知の臓器であるため、前立腺肥大症についての原因もはっきりとはわかっていません。
前立腺は全体の25%-40%が平滑筋で構成されており、交感神経と副交感神経の働きによって収縮と弛緩がコントロールされています。
交感神経は、神経末端にある受容体と呼ばれる受け皿と結合することで血管を収縮させ、血圧を上昇させるなどの働きをしますが、この受容体にはα(アルファ)受容体とβ(ベータ)受容体の2種類があり、さらにα受容体はα1とα2に分類され、それぞれが異なる組織に存在し、異なる働きをしています。
このうちα1受容体は平滑筋上に多く存在し、血管収縮作用を含む収縮反応全般に関わっている受容体です。そのため前立腺が肥大すると、細胞とともにα1受容体も増えて交感神経の作用を増強し、前立腺筋緊収縮による尿道が閉塞された状態を継続させてしまいます。 その結果、排尿開始遅延、尿線細小、尿線分裂、排尿終末時滴下、残尿感、尿意頻拍、頻尿、夜間頻尿などの症状が引き起こされます。
尿意があるにもかかわらず、自分で排尿できなくなる急性尿閉も、前立腺の肥大が原因のひとつとなって起こる病気で、特に中期以降に起こりやすい重篤な症状です。例えば前立腺肥大の人が多量に飲酒や抗ヒスタミン薬を含む風邪薬を服用すると、前立腺尿道の急性浮腫や尿道排尿筋の活動低下が起こるため、尿が一切排出されなくなり、ぼうこう容量の増大とともに恥骨上部に強烈な疼痛などが起こります。
肥大した前立腺の筋肉に作用して尿道を拡げ、尿道内圧を低下させることで排尿障害の症状を緩和させる働きをするのがアルフシン10mgです。
有効成分のアルフゾシンはα1受容体遮断薬(α遮断薬)と呼ばれ、末梢血管の平滑筋を支配するα1受容体を選択的に遮断し、過剰な収縮を抑制して前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善します。
ただし肥大した前立腺を小さくする作用はないため、α1受容体遮断薬はあくまでも対症療法であり、服用を中止すると症状は元に戻ります。また原則的に女性の排尿障害への適応はありません。