アナポロン50mgは、再生不良性貧血による骨髄の消耗状態、骨粗しょう症、下垂体性小人症、著しい消耗状態(慢性腎疾患、悪性腫瘍、手術、外傷、熱傷)などの治療に効果を発揮するたんぱく同化ステロイドです。
たんぱく質は1万個以上のアミノ酸が繋がった複雑な構造をしており、筋肉の主成分でもあります。食品などによって摂取されると、胃や腸でごく小さな個々のアミノ酸に分解されて体内に吸収された後、一部のアミノ酸は再びたんぱく質に作り上げられ、筋肉などになります。このように、摂取したたんぱくを筋肉などの細胞内組織に変える働きを、たんぱく同化作用言います。
このたんぱく同化作用を持つステロイドホルモンを総称して、たんぱく同化ステロイドと言いますが、主に筋肉増強剤として使用され、ドーピング薬物としても知られています。短期間で劇的な筋肉増強を実現するとともに、常態で得ることのできる水準を遥かに超えた筋肉成長を促す作用を持つことから、運動選手などの間で長年にわたって使用されています。
たんぱく同化ステロイドの代表的なものは男性ホルモンで、中でもテストステロンは筋肉増大、タンパク質同化作用の促進、性衝動の増進などの作用を持っています。ところが男性ホルモンには体毛の増加、筋肉増強、声変わり、性欲の亢進などの症状を生じさせることが多く、例えば女性が摂取した場合でも同じような症状が出現することがあります。そこでたんぱく質同化作用を強めつつ、これらの副作用をできるだけ抑えるように人工的に合成された薬が、アナポロン50mgを含むたんぱく同化ステロイド剤です。
たんぱく同化ステロイド剤は、たんぱく質を体に蓄積することで筋肉を厚くして体重を増やす作用があり、また使用中は実際の筋肉の増加以上に筋肉がつくため、筋肉増強目的やドーピングとしてスポーツ選手などが好んで使用する傾向があります。
またそれ以外にも、抗貧血剤、骨多孔症治療剤、高脂血症改善剤など、医学的治療目的としても使用されています。医薬品としてのたんぱく同化ステロイド剤には、メスタノロン製剤とメテノロン製剤の2種類があり、前者は骨粗しょう症、下垂体性小人症、慢性腎疾患、悪性腫瘍、外傷や熱傷による著しい消耗状態などの治療に用いられます。また後者は、ヘモグロビン量や赤血球数の増加などの造血作用を示すため、再生不良性貧血による骨髄の消耗状態の治療に用いられています。
アナポロン50mgの有効成分であるオキシメトロンは、男性ホルモン剤のメチルテストステロンより強力なたんぱく同化作用(筋肉発育促進作用)を持っていますが、男性ホルモン作用は比較的弱いという特徴があります。また血中脂質低下作用のほかに、エリスロポエチンの産生増加を介することで造血効果を発揮します。
なおほかの薬剤と同様に、アナポロン50mgを含む同化ステロイド剤の服用においても副作用が出現します。主に血圧上昇とコレステロール値上昇のほか、空腹時血糖値や耐糖能検査の変化も見られ、循環器疾患や冠動脈疾患のリスクを増大させます。また、テストステロン濃度増加に伴い皮脂腺が刺激されることで、にきびも多く見られるようになります。
さらに高用量を服用すると、同化ステロイドが消化管で代謝(C-17α位のアルキル化)され、その生物学的利用率および安定性が増すために肝障害を起こすことがあります。
しかしいずれにしてもこれらの副作用は用量依存性であるため、減量や服用の中止により、ほとんどの副作用は徐々に改善されていきます。
なお、アナポロン50mgの有効成分・オキシメトロンは世界アンチ・ドーピング機関によって禁止薬物に指定されています。
世界ドーピング防止規定 2013年禁止薬物表国際標準