アナブレツ1mgは、主に閉経後のエストロゲン受容体陽性、およびエストロゲン受容体不明乳がんに優れた効力を発揮する薬で、がん細胞の増殖を抑制する薬です。
乳がんは乳房組織に発生するがんで、年齢とともに増加する傾向があり、日本人の場合25-30人に1人が発症すると言われています。
要因としては主に、妊娠・出産歴がない、母乳を与えない、初経年齢が低い、閉経年齢が高い、飲酒や喫煙などの生活習慣などが挙げられますが、性ホルモンのひとつであるエストロゲン(卵胞ホルモン)が関係している場合もあります。
女性は性ホルモンとして、エストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)を男性より多く持っていますが、中でもエストロゲンはエストロゲン受容体(ER)と呼ばれる物質と結合することによって、乳腺や腺房の発達を直接的に支配し、育児のための乳汁をつくる機能を整えるなど、女性を女性らしく保つ役割を持っています。
しかし 閉経後は卵巣機能が衰えてエストロゲンがつくられなくなるため、その代わりに副腎で作られる男性ホルモンのアンドロゲンが、脂肪などにあるアロマターゼという酵素によってエストロゲンに変換されるようになります。
エストロゲンが急速に減ると、分泌量が減る一方のエストロゲンを少しでも多く受け止めようと、乳管上皮細胞でエストロゲン受容体が増えます。
この受容体と結びついたエストロゲンは細胞分化や細胞増殖を促進作用があるとされ、このようなエストロゲンとエストロゲン受容体との結合によって発生、進行する乳がんはエストロゲン受容体陽性(ホルモン受容体陽性)乳がんとされています。
エストロゲン受容体陽性(ホルモン受容体陽性)乳がんはホルモンに依存して増殖する特徴があるため、エストロゲンの分泌や働きを妨げることでその進行を著しく遅らせることができるとされています。
そこで、アロマターゼの働きを阻害してエストロゲンに変換できないようにする働きをするのが、アロマターゼ阻害剤のアナブレツ1mgです。
アナストロゾールはアンドロゲンがアロマターゼと結合する部位に結合し、アンドロゲンがアロマタ-ゼと結合することを不可能にします。
このことによって、アンドロゲンからエストロゲンへの変換が阻害され、結果として受容体へ結合するエストロゲンの産生が抑制されることからがん細胞の増殖が阻害されることになります。
アナブレツ1mgのように直接がん細胞へ作用するのではなく、がんの増殖を促進するホルモンの作用を妨げてがんの進行を抑える療法をホルモン療法と言います。
海外で行なわれた臨床試験の報告によると、アナストロゾールはアロマターゼ活性の約96%を阻害したとの結果が出ています。
しかし基本的にホルモン療法がその有効性を現わすのは、がん細胞内にエストロゲン受容体がある陽性の場合のみとされており、エストロゲン受容体がない陰性の場合は薬物療法による効果がほとんど期待できないため、化学療法による治療が行なわれるのが一般的です。