アストラリーン40mcgは、β2受容体刺激薬に属する気管支拡張薬で、主にぜんそくや気管支炎の治療に使用されます。またその作用から、腹圧性尿失禁の治療薬としても用いられています。
気管支ぜんそく(ぜんそく)は、アレルギーにより気管支が慢性的な炎症を起こす疾患で、気管支炎はウイルスや細菌による感染症です。これらは異なる疾患ですが、症状が似ていることも多く、いずれも気管支の炎症という共通の症状が現われます。この気管支の炎症は粘膜のむくみによるもので、むくみによる狭窄は平滑筋の収縮により起こりますが、この収縮に関与しているのが交感神経です。
交感神経が刺激を受けると、交感神経系の伝達物質であるアドレナリンとノルアドレナリンが神経の末端から放出され、目的の臓器にある受容体と結合することでその指令を伝達していきます。この受容体にはαおよびβの2種類あり、このうち気管支筋の弛緩作用はβ受容体の刺激によります。β受容体はさらに心筋収縮力の増大に関係するβ1と、気管支、子宮などの弛緩・拡張に関係しているβ2に分類することができ、特に気管支拡張剤においては、このβ2受容体に対して選択的に反応を示すものが望ましいとされています。
アストラリーン40mcgの有効成分であるクレンブテロールは、気管支の筋肉のβ2アドレナリン受容体というたんぱく質に結合してこれを活性化するβ2受容体刺激薬です。気管支ぜんそくや気管支炎では、気管の筋肉が収縮して気管を狭め、呼吸困難などの症状を起こしますが、クレンブテロールが気管支の筋肉にあるβ2アドレナリン受容体を活性化することで、筋肉収縮が緩まり、狭くなった気管が広がるために呼吸がしやすくなります。
また、クレンブテロールのβ2アドレナリン受容体刺激作用は体のどの部位の筋肉に対しても同じ働きをしますが、主に内臓や血管を形作るための筋肉である平滑筋と、骨と骨とをつなぐ骨格を作るための筋肉である骨格筋とに対しては、体の部分により正反対の作用を示すことがあります。Β2アドレナリン受容体が活性化されると、それに引き続き筋肉細胞の中でさまざまな生体分子が反応して筋肉を動かすための指令を出しますが、平滑筋と骨格筋ではこの生体分子の反応がまったく異なるため、同じβ2アドレナリン受容体を刺激しても出てくる作用が異なるのがその理由です。
クレンブテロールのこの特徴は、気管支拡張薬として以外に腹圧性尿失禁の治療にも利用されています。
腹圧性尿失禁は出産経験のある女性に特に多い病気で、せきやくしゃみ、運動、重い荷物を持ったときなど、お腹に力が入ったときに、自分の意思に関係なく尿が漏れてしまう状態です。通常は骨盤底筋という筋肉が膀胱と尿道を支えることで尿道が締まり、尿が漏れるのを防いでいますが、出産、加齢、血液中の女性ホルモンの低下などにより、この骨盤底筋が弱くなったり傷んだりすると、尿道をうまく締められなくなるために起こると言われています。
アストラリーン40mcgのクレンブテロールは、尿道括約筋にあるβ2アドレナリン受容体を刺激して尿道括約筋を収縮させ、尿が漏れるのを防ぐだけでなく、膀胱の筋肉にあるβ2アドレナリン受容体を活性化し、膀胱の筋肉の収縮を抑えます。この働きにより膀胱の筋肉が緩み、尿をより多く溜められるようなることから尿漏れの症状を改善することができます。
なお、クレンブテロールには代謝を上げ、脂肪を燃焼して筋肉を増強させる作用もありますが、筋肉増強剤として服用する場合は、副作用発現の確率が上昇すると言われているライン(1日80mcg)を超えて摂取する必要があるため、めまい、吐き気、手足のふるえ、心悸亢進などのほか、最悪の場合心肺停止や死亡に至る可能性もあり、用法や用量に関しては医師に確認してください。